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2006 FIFA ワールドカップ 〜 グレアム・ポール氏の失態 ▼「ジダン不在」フランスの実力(図解あり) ▼エリソンド主審の名審判
Jun. 24, 2006
worldcup20060624


ワールドカップは、各国から1人ずつ選出されている主審にとっても、名誉ある大舞台である。当然、各国1部リーグで随一と見做されている面々が笛を吹くわけだが、グループF クロアチア v. オーストラリアに於いて、我らが「イングランド代表」グレアム・ポール氏が、やらかしちゃった。シムニッチに2枚目のイエローカードを出した際、1枚目であると勘違いして、レッドカードを出さなかった。気付いたポール氏は、試合終了後にもう一度イエローカードを出し、レッドカードを出した。シムニッチは、1試合で計3枚のイエローカードを貰った、伝説の選手となった。

まぁこの試合は、8〜9枚のイエローカードと3枚のレッドカードが乱れ飛ぶ、荒れた内容だったとはいえ、4人いるオフィシャルが誰も気付かなかった、というのが不思議だ。ドイツのテレビ局の人が、「2枚目ですよ!」と書いたカンペでも見せてあげればよかったのに。

今日になって報じられたポール氏の説明によると、背番号3のシムニッチに2度目の警告を出した際、間違ってオーストラリアの背番号3、クレイグ・ムーアの名前を書いてしまったらしい。シムニッチとシミッチを間違えるならまだわかるが、シムニッチとムーアって…。「ム」しか同じじゃないのに。ということは、もしムーアがその後、警告を受けたとしたら、一発退場だった訳か。ちなみに、クロアチア7番のシミッチと、オーストラリア7番のエマートンは、ともに「正しく」2枚ずつのイエローカードを貰って、退場している。

FIFAは「もしオーストラリアが負けていたら、再試合しなければならないところだった」というコメントを出し、ポール氏は失意のなか帰国の準備をしているという。

さて、この日の試合でノックアウトステージ進出2チームが決まる注目のグループG スイス v. 韓国は、我らが「アルゼンチン代表」オラシオ・エリソンド Horacio Elizondo 氏(写真)の笛で始まった。

ボールを競る際にいちいち腕を振り回し、体当たりを繰り返す韓国の汚いプレイの数々は、観ていて、もう吐き気がする程だ。NHK実況アナのコメントがいちいち韓国目線なのも非常に不愉快だ。こいつはいったい何を勘違いしているのか。在日韓国人がどれくらいの受信料を納めているのか知らないが、スイスがチャンスの時は「韓国ピンチ!」では無く、「スイスのチャンス」と言え。

エリソンド主審の判定は、まずまず公平なものだったが、線審のオフサイド判定も相変わらず韓国寄り。しかし、こんな不快感を、まずセンデロスが吹き飛ばしてくれる。23分、韓国陣内右寄り35ヤード、韓国10番のパクなんとかがバルネッタを引き倒す汚いプレイで、ハカン・ヤキンの左足フリーキック。インスウィングのボールはゴール前へ正確に飛び、これにファーサイドのセンデロスの頭がジャストミート、ゴール右隅に決まる。センデロスの頭は同時に、韓国4番のチェなんとかの頭にもジャストミートし、双方が流血するが、センデロスは額から血を流しながら、ベンチにその喜びを伝えに行った。センデロスは、今大会ゴールを決めた5人目のガナー。無理かも知れないが、このゴールは今後20年、「血染めのゴール」として、語り継がれて欲しい。

追加点は早々には生まれなかったものの、スイスの攻撃は、この日も効果的で威力があった。よく噛み合ったパスワークで攻め上がって得た多くのコーナーキックが、多くのチャンスを生み出した。スイスのCKは、右の時は左利きのハカン・ヤキンがキッカー、右利きのバルネッタがショートパスを受ける位置に立つ。左CKの時は逆。飛んでくるボールがインスウィングかアウトスウィングかわからないので、守りにくい、という訳だ。さすが精密機械の国スイス、仕事が細かいぜ。

40分台になって、ディフェンダー陣、主にミュラーの混乱から、スイスはピンチを招くも、何とか凌ぎ切り、1-0で前半を終了する。

丁度その頃ケルンでは、ハノーファーの試合が引き分けた時の為に2点差を付けて勝っておかなければならないフランスが、トーゴを相手に、まだ1点も取れずに前半を終了していた。

ジダンが出場停止のおかげで、左サイドハーフにマルーダ、右にリベリー、アンリー+トレゼゲの2トップという布陣が可能となった。リベリーは相変わらず走り回っているが空回り気味、簡単なシュートをフカし捲っている。もっと早い段階からこのメンバーで固定して、磨きあげていれば、苦労しなかったのに。しかし、チームとしての攻撃そのものは悪く無い。しかも、アデバヨールには悪いが、相手はトーゴだ。2-0は充分可能なはず。

ハノーファーの後半は、韓国が押し込み始めた。スイスCB ミュラーの動きが何となく不安なので、早めにジュールーに替えた方が良いのにな、と思っていたら、51分、韓国19番チョなんとかの薄汚いプレイで引き倒されたセンデロスが、右腕を負傷。ジュールーが、ミュラーでは無く、センデロスと交代する羽目になる。右腕を固定しながら、そのままメディカルルームへと消えたセンデロスは、その後ベンチに戻っていたが、具合が心配だ。骨折などしていなければ良いが。

そうこうするうちに、ケルンでスコアが動く。55分、トーゴ陣内中央右寄りでボールを得たマルーダから、左寄り前方のリベリーへ。同時に、ヴィエラが中央を物凄いスピードで駆け上がってくる。ヴィエラは、リベリーの左脇をすり抜け、ペナルティボックス内に到達し、スルーパスを受けようとするが、リベリーは何故かドリブルしている。それじゃヴィエラのオーヴァーラップの意味が無いだろう、リベリー。全く解って無いリベリーは、満を持して、既に相手DFラインに並んでしまっているヴィエラにパス。それでもヴィエラは、ワントラップの後、振り向きざまに右足を振り抜いて、ゴール右上に決める。フランスの今大会2点目である。

続く61分。中盤でのマケレレ、ヴィエラ、そしてこの時は大人しく右に張っていたリベリー等のパス交換から、右後方のサニョルにボールが渡る。同時に、ボールを貰いに下がってくるトレゼゲ。この瞬間、トレゼゲと入れ替わる形で、ヴィエラはまたもや猛スピードで前線へと駆け上がる。この動きを見たサニョルは、ペナルティボックス内右寄り目掛けて、ロングボールを飛ばす。ヴィエラはバックヘッドで、ボールを中央のアンリーに落とし、アンリーはこれをワントラップして、右足でゴール左隅に叩き込む。欲しかった2点目が、旧アーセナルのホットラインによって、フランスにもたらされた。

トーゴ左SBを引き連れて下がってきたトレゼゲ。その結果出来たスペースに走り込むヴィエラ。その意図を理解し、精度の高いボールを送ったサニョル。後方から来るボールに正対していたにもかかわらず、背後のアンリーの位置を正確に把握していたヴィエラ。そして、相手CBを背負いながらも、右足で絶妙にトラップして決めた、アンリーの技術とシュートタイミング。全てが素晴らしかった(図)。これが、フランス代表が潜在的に持っていた、本来の力である。

リベリーが右サイドに居た事にも、大きな意味がある。サニョルとパス交換出来た事では無い。「4-4-2 フラット」であるからこそ、「トップ下」にスペースが出来、そのスペースに、誰もが走り込める。この時はトレゼゲが利用した。これによって今度は、ゴール前右にスペースが出来、ヴィエラが利用した。「トップ下専門」がデンと居座っていたのでは、この得点は生まれない。

この日、ヴィエラは、自らのゴールとアシストで、30歳の誕生日を飾った。一方のジダンは、34歳の誕生日を、ベンチで過ごした。

誕生日の選手がいないハノーファーでは、まだ2点目は生まれない。64分、カウンターからフライがシュートを放つが、惜しくも右ポストを叩く。「フランス、2点リード」の報を得て、韓国のプレイはますます汚くなるが、集中力を乱さないスイスの選手達の好感度は、ますます上がる。GK ツバービューラーも、イングランドの大衆紙なら "SUPER-buhler!" という見出しを掲げるだろうと思う程の好セイヴィングを続ける。そして77分。痛快極まりない出来事が起こる。

韓国陣内中央30ヤード、数分前にハカン・ヤキンに替わって入ったマルガイラスと誰かが重なったところから、オフサイドラインぎりぎりの位置にいたフライにスルーパスが出る。飛び出したフライはGKを躱し、そのままボールを無人のゴールへと流し込む。線審の旗は上がっており、私もオフサイドだと思った。ところが、エリソンド主審はオーヴァールールを行なってオフサイドを否定し、ゴールを宣告した。エリソンド氏は、韓国選手の猛抗議にも動じず、一応線審に再確認した上で、あらためてスイスのゴールを認めた。エリソンドもやらかしちゃったか、まぁでも韓国はこれぐらいの誤審食らっても当然だよな、フランス戦では失点が揉み消されてるわけだし、と、一瞬思った。が、VTR録画をあらためてジョグ送りしてみると、別の事実が見えた。

フライに対して縦に出たボールは、マルガイラスから直接出たものではなく、マルガイラスが右にいる誰かに横パスを出したところ、カットに行った韓国選手の右足に当たって跳ねたものだったのだ。これを韓国のバックパスと見るなら、オフサイドはあり得ない。ディフレクションボールと見るなら、縦に出た瞬間では無く、マルガイラスが横パスを出した瞬間の、フライの位置が問題となる。この瞬間のフライは、完全にオンサイド。横から見ると選手が重なっており、線審の目にはマルガイラスが直接フライにスルーパスを出したように見えたか、或いはその振りをしたのだろう。が、縦の位置にいた主審には、事実が見えていた。これは、完全無欠なゴールである。誤審どころか、「世紀の名審判」だ。エリソンド偉い!偉すぎる!!

スイスもフランスも、そのまま相手を完封し、2-0での勝利を飾った。スイスは勝ち点7、無失点でグループGを1位突破。フランスも勝ち点5で、ノックアウト・ステージへ。完璧、である。ヴィエラもアンリーもセンデロスも素晴らしかったが、この日のMVPは、何と言っても、オラシオ・エリソンド様だろう。審判に関しても、「アルゼンチン代表」は、世界最強である。