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2006 FIFA ワールドカップ 南米予選 アルゼンチン対ブラジル ~ 全てを兼ね備えた最強チーム、予選突破
Jun. 9, 2005
worldcup20050609


試合内容と個々の選手のクォリティはともあれ、ワールドカップ2006の出場権を、日本代表はよくぞ勝ち取った。それも、北朝鮮から2ゴールを奪い、北朝鮮プレイヤーの醜い暴力行為をうまーく引き出すオマケまでつけて。田中誠、よくやった。少なくとも今は、これ以上は望むまい。立派な結果である。「世界で一番最初に本戦出場を決めた」というのは、「世界で一番最初にボジョレー・ヌーヴォーが飲める」というのと同じぐらい、どーでもいい話だが。

ところで、「日本が本戦一番乗りとなったのは、今月4日にアルゼンチンがエクアドルに負けたからである」という事実は、さほど世間の話題に上っていないようだ。

10ヶ国が総当たりでホーム&アウェイを戦う、という過酷な南米予選の第14節。トップのアルゼンチンはあと1勝すれば勝ち抜けだったが、海抜2,800mという高地でのアウェイ戦、アルゼンチンBチームは息も絶え絶え、良いとこ無しでの敗戦だった。そのおかげで昨日、日本は一番乗りとなり、アルゼンチンは、W杯本戦出場決定の瞬間を、ホームで、宿敵ブラジルを迎えて争うこととなった。

結論から言おう。この試合での、少なくとも前半のアルゼンチンは、世界最強である。スピードとテクニック、ドリブルとパスワーク、美しさと凶暴さを、これほどまでに兼ね備えたチームは、他には無い。

Abbondanzieri


Coloccini
Ayala
Heinze


Mascherano
Sorín


L. González
Riquelme
K. González


Saviola

Crespo

3バックではあるが、コロッチーニとエインセは大きく開いて左右サイドを守る、4バックの両サイドバックのような働き。その分、ソリンとマスチェラーノがセンターバックのゾーンをカヴァーする、独特の形である。こういう3バックもあるんだよね。ペケルマン監督というのは、実は名監督なのではないだろうか。この日のソリンの動きは、キリ・ゴンサーレスと入れ替わって中盤の左サイドまでをその領域とする、大きな三角形を描いていた。

前半4分、我らがルイス “ルチョ”・ゴンサーレスから絶妙のスルーパスがクレスポに通って、先制。この日のルチョは本当に素晴らしかった。クレスポの動き出しも最高。ブラジルは、アルゼンチンのスピードに煽り立てられて、自分達のリズムを作れない。そして18分、ロベルト・カルロスが大きく浮かせたクリアボールを、リケルメが右足アウトソールの見事なタッチでダイレクトに右後方のマスチェラーノへ。マスチェラーノから右サイドのルチョへ。ルチョがリケルメに戻し、リケルメはホキ・ジュニオールを背負いながらゴールを背にしてキープするが、まさかここから撃つとは思わなかった。振り向きざまに放った25ヤードのミドルシュートは、ゴール左上隅に突き刺さる。ヂーダ、為す術無し。これには本当に度胆を抜かれた。まさに “stunning goal” である。「キレキレ」とは、こういうことを言うのであり、「スーパーゴール」とは、こういうことを言うのだ。ロナウジーニョの表情からいつもの余裕が消えてゆく。

さらに40分、自陣でロベルト・カルロスの不用意なパスをカットしたコロッチーニが、中央に下がったリケルメへ。リケルメから、右サイドに流れていたクレスポに。上がり切っていたブラジルバックラインの裏を狙って、クレスポは2タッチでスルーパス。中央を駆け上がるサビオラには渡らなかったが、カヴァーに走ったカフーは、ボールをバイライン外に蹴り出すしかなかった。リケルメによる右コーナーキックは、サビオラへのショートパス。サビオラはカフーを背負いながらゴールを背にして、リケルメに戻すような顔をしながら、一瞬の隙を突いて左足で振り向きざまのクロス!これを感じていたクレスポも凄い。ダイビングヘッドで合わせて、3-0。熱狂するエスタディオ・モヌメンタール。そう、ここは、リーベル・プレイトのホームスタジアムである。サビオラもクレスポもソリンも、元リーベルの選手であり、ルチョとマスチェラーノは「現」リーベルの選手である。

後半のアルゼンチンは少々スピードダウンし、リズムがブラジルに合ってしまった。攻め込まれる時間帯が増え、71分にはR. カルロスの弾丸フリーキックにより失点するが、ブラジルの反撃もそこまで。ワールドカップ本戦の決勝にこそ相応しいカードで、アルゼンチンは見事に予選突破を決めた。

もう来週から始まるFIFA コンフェデレーションズ・カップで、日本はグループステージを勝ち抜け、このアルゼンチンと相まみえることが出来るだろうか?対戦してもしなくても、日本人は、アルゼンチンのプレイを、その目に焼き付けておくべきだ。ジーコ監督は同意しないだろうが、日本人選手にとって勉強になるのは、ブラジル人のプレイではない。