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荒井由実「晩夏(ひとりの季節)」 ~ 詞と曲が織り成す色彩と陰影のグラデーション
Sep. 5, 2004
あらいゆみ


夏から秋への季節の移ろいに、恋の終わりや人生の変わり目を準えた歌は多いけれど、ユーミンの「晩夏(ひとりの季節)」は名作だと思います。 «写真は収録アルバム「14番目の月」(1976)»


ゆく夏に 名残る暑さは夕焼けを
吸って燃え立つ葉鶏頭

この歌詞の良いところは、移ろう季節と、暮れてゆく時の流れを重ね合わせ、かつその変化を「色彩」に的を絞って表現しているところです。

空色は水色に 茜は紅に

色彩と、色の名前が呼び起こすイマジネーションとが、何とも微妙なグラデーションを織り成しています。


さて、微妙な変化を魅力としているのは、詞だけではありません。曲もまた、同様の「グラデーション」を表現しています。冒頭歌い出し部分の旋律をCメロで書くと、

|シドレミシーーー|・シドレミレドミ|シドレミシーーー|・シドレミレドレ|

1〜2小節目と3〜4小節目はほとんど同じ音列ですが、コードだけが変化しています。1〜2小節目は IM7、3〜4小節目は VIIm7 - III7 。異なるコードを伴いながら、同じ形のメロディを繰り返すことによって生まれる響きの変化が素敵ですね。あたかも、照らされる光によって樹木や草花が様々に表情を変える、そんな瑞々しさが感じられます。色彩と陰影の繊細な変化が、音楽的に表現されているわけですね。

今年の秋は、どんな風に訪れるのでしょう。ドーン、台風来た!ザーン、雨降った!まるで幕間を経た舞台のように、がらっと秋になるのでしょうか。それとも、この雨が止んだら、夏日をもうしばらく繰り返しながら、少しずつ秋に変わって行くのでしょうか。