受験生の皆さんお疲れさまです。私は毎年、センター試験の英語の問題だけはざっと目を通すことにしています。今、教育の世界では英語のどんな要素が重要視されているのか知りたいし、女子高生の英語の師匠にならないとも限らないしね。私が受験生の頃は「共通一次試験」と呼ばれていたけれど、やっぱり1月のこの時季で、雪が降って、寒くて大変でした。
今年の問題を見ると、誕生日サプライズパーティのお知らせをメールで受け取る話とか、学級新聞ホームページを作る話とか、問題文のなかにもインターネット関連の事柄が登場しています。受験生に身近な例文を、という問題作成者の工夫なのでしょうけれど、実際のところ、これは微妙な要素を孕んでいます。試験問題の例文は完璧に正しい英語でなければなりませんが、インターネット用語というものは、まだ新しくて、「誰もが認める正しい表記/用法」が確定されていないからです。
「第1問のB」に、“Nick sent an e-mail message to everyone about it.” という文が出て来ます。例えばこの中の “e-mail” という単語は、以下のふたつの点で、「正しい表記/用法」が確定されていません。
b) 「数えられる名詞(可算名詞 countable noun)」なのか「数えられない名詞 (不可算名詞 uncountable noun)」なのか。
a) に関して言うと、昔はハイフンありの “e-mail” でした。でも今では “email” という表記も多く見かけます。b) に関しては、そもそも “mail” という単語は不可算名詞としての用法と可算名詞としての用法で若干意味が違ったりします。では “e-mail” / “email” の場合はどうなのか?AOLのメール着信メッセージは “You've got mail” (=不可算名詞扱い)であり、 “You've got a mail” ではありません。メグ・ライアン主演の映画のタイトルも “You've got mail” でしたね。
言葉は生き物。特に新しい言葉はさらに「生き物」なので、みんながどう使っているか調べてみましょう。検索サイト Google.com で対象言語を英語だけに絞って、フレーズ検索で、以下の4通りの言い回しで検索してみます。
“send an email”(可算名詞扱い+ハイフンなし)
“send e-mail”(不可算名詞扱い+ハイフンあり)
“send email”(不可算名詞扱い+ハイフンなし)
さて、どの用法がもっとも多くヒットするでしょうか?結果発表です。
第1位 | “send email” | 約7,460,000件 |
第2位 | “send e-mail” | 約6,180,000件 |
第3位 | “send an email” | 約5,300,000件 |
第4位 | “send an e-mail” | 約3,360,000件 |
上位2チーム、「不可算名詞扱い」のふたつが、見事グループリーグ突破です。ちなみに “send emails” “send e-mails” (=可算名詞扱い、複数形)で検索すると、お話にならないぐらい低い件数です。
このあたりが微妙だから、センター試験の英文も、突っ込まれないように “an e-mail message” みたいな回りくどい表現を使っているわけですね。問題作成する人たちも、お疲れさまです。